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相続税申告の流れ
1 相続税申告の流れ(概要)
相続税の申告が必要な場合は、10か月以内に、必要書類を添付のうえ、被相続人の住所地を管轄する税務署に、相続税の申告書を提出する必要があります。
万が一、この期限に遅れてしまうと、無申告加算税等のペナルティを課せられる場合がありますので、注意してください。
相続税申告までの大まかな流れとしては、以下のとおりです。
① 相続人の確定
② 遺言書の有無の調査
③ 相続財産(土地、建物、預貯金等)の調査
④ 相続財産の評価
⑤ 遺産分割協議書の作成(遺言書がない場合)
⑥ 相続税申告書の提出と相続税の納付
2 相続税申告の流れ(詳細)
① 相続人の確定
まず、相続税申告の前提として、必ず相続人の確定を行う必要があります。
なぜなら、相続税の金額は、相続人の人数や誰が相続人かによっても、大きく変わることがあるためです。
これは、相続財産の総額のうち、相続人の人数によって決まる一定の基準(3000万円+法定相続人の数×600万円)を超える部分に限り、相続税が課税されることとなっているためです。
そのため、相続人の確定は非常に重要であり、具体的な相続人の確定方法としては、戸籍謄本等を取得することで行います。
たとえば、被相続人に子がいる場合は、被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本を取得し、相続人の戸籍謄本も取得することで、相続人を確定させます。
また、被相続人に子がおらず、両親や祖父母も他界しており、相続人が被相続人の兄弟姉妹の場合、被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本に加えて、両親の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本、祖父母の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本、相続人の戸籍謄本を取得する取得する必要があります。
なお、戸籍謄本等については、本籍地のある役所で取得する必要がありますが、役所が遠方の場合、郵送でも手続きを行うことができます。
② 遺言書の有無の調査
遺言書の有無によって、その後の手続きが大きく異なることがあります。
基本的に、遺言書があれば、その内容で相続財産が分割されるため、相続人同士で遺産分割の話し合いをする必要はなく、後述の遺産分割協議書も作成する必要はありません。
また、遺言執行者が指定されている場合は、預貯金の解約や不動産の名義変更等も遺言執行者が代表して行うため、各相続人で預貯金の解約等を行う必要はなくなります。
それでは、遺言の有無については、どのようにして調査を行えばよいのでしょうか。
そもそも、遺言書には、よく使われるものとして、手書きの遺言書(自筆証書遺言)と公証役場で作成される遺言書(公正証書遺言)があります。
このうち、自筆証書遺言については、被相続人以外にその存在を知らない場合、自筆証書遺言を法務局に預けていた場合を除いて、遺言書を見つけるためには、家中を探すしか方法はありません。
法務局に預けていた場合は、被相続人の死後、特定の人に法務局から自筆証書遺言の存在を知らせる連絡が行きます。
他方、公正証書遺言については、被相続人の死後、公証役場に確認することで、公正証書遺言の有無を調査することができます。
③ 相続財産(土地、建物、預貯金等)の調査
相続税申告において、相続財産の内容を調査することは極めて重要です。
相続財産の額により、相続税の額が決まってくるためです。
相続財産の調査が不十分で、相続税の申告後、新たに財産が発覚した場合、過少申告税や延滞税、重加算税等のペナルティを課せられる場合もあります。
そのため、相続財産の調査は、財産に漏れがないように、しっかりと調査する必要があります。
具体的な調査方法として、土地や建物といった不動産に関しては、毎年役所から届く固定資産税課税明細書を見れば、不動産の所在等をある程度把握することができます。
もっとも、役所から届く固定資産税課税明細書には記載されていないものの、相続税の対象財産になる不動産が存在する場合もあります。
そのため、課税明細書が届いた役所に対しては、念のため、固定資産税課税台帳(名寄帳)を取得する方が良いでしょう。
また、預貯金に関しては、家中を探し、通帳がないかを確認したり、近くの金融機関に尋ねたりして調査します。
株式に関しては、定期的に証券会社等から送られてくる残高報告書等を参考に、死亡時の残高証明書を発行する方法で調査を行うことが多いです。
④ 相続財産の評価
相続財産の調査ができれば、次に、相続財産の評価を行います。
相続財産の評価について、預貯金や株式については、既経過利息の参入など細かい部分はありますが、基本的に難しくはありません。
もっとも、土地や非上場の株式の評価方法については、税理士でも間違えるぐらい複雑です。
たとえば、土地の形がいびつな場合の計算方法が別途用意されており、適切に計算できるかどうかによって、評価額が大きく変わります。
国税庁のホームページにも、形がいびつな土地の評価方法が記載されております。
参考リンク:国税庁・不整形地の評価――差引き計算により評価する場合
このように、相続財産の評価に関しては、相続財産に土地や非上場の株式がある場合は評価が難しいことがありますので、相続税に詳しい税理士にご相談された方が安心です。
⑤ 遺産分割協議書の作成(遺言書がない場合)
相続財産の評価が終われば、遺言書がない場合、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書に関しては、誰が、どの財産を、どのように取得するかを記載します。
たとえば、不動産を現実に分けて取得するという分割方法(現物分割)や、特定の相続人が不動産を取得し、代わりに、他の相続人にお金を支払うという分割方法(代償分割)、不動産を換価して、代金を相続人間で分配するという分割方法(換価分割)等があります。
遺産分割の仕方について相続人全員で合意ができれば、遺産分割協議書に各相続人に署名、押印をしてもらい、遺産分割協議書を完成させます。
⑥ 相続税申告書の提出と相続税の納付
遺産分割協議書も作成できましたら、最後に相続税申告書の提出と相続税の納付を行います。
3 相続税に強い税理士にご相談を
以上のように、相続税申告に関しては、これらの一連の手続きを、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。
10か月と聞くと時間があるようにも思えますが、実際はかなりタイトなスケジュールになることもあります。
そのため、相続税申告が必要な方は、早め早めに準備をしておいた方が良いでしょう。
また、相続税申告に関しては、不動産の評価や特例・控除の有無によって、相続税の金額が大きく異なる場合がありますので、相続税に関する知識が特に重要です。
税理士の中には、相続税に関して、あまり詳しくない方も実際にいますので、相続税に強い税理士にご相談されることをおすすめします。
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